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【2026年】山林の相続登記費用と免税措置|90日の届出も解説
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【2026年】山林の相続登記費用と免税措置|90日の届出も解説

読了目安: 17分 公開: 2025.12.26 更新: 2026.08.25

山林の相続登記は自分で申請すれば実費数千円で済みます。ただし2026年4月に免税の根拠条文番号が変わり、旧番号のままでは免税を受けられません。登録免許税の免税要件と森林法の90日届出を公的資料をもとに解説します。

山林を相続したものの、「登記をするだけで何万円もかかるのか」と手が止まっている方は少なくありません。売れる見込みの乏しい山に、まとまった費用を投じる決断はつきにくいものです。

結論から書くと、山林の相続登記は条件がそろえば実費数千円で完了します。評価額100万円以下の土地には登録免許税の免税措置があり、山林の多くはこの範囲に収まるからです。ただしこの免税は、申請書に根拠条文を一行書かなければ適用されません。しかもその条文番号は2026年4月1日に変更されています。古い記事の番号をそのまま書き写すと、免税を受け損ねるおそれがあります。

この記事では2026年8月時点の公的資料をもとに、費用の内訳、免税を確実に受けるための記載、山林だけに課される90日以内の届出義務、登記後の出口となる国庫帰属の実費を整理します。

山林の相続登記にかかる費用の内訳

費用は「登録免許税」「書類の取得実費」「司法書士報酬」の3つに分かれます。自分で申請すれば3つ目はゼロです。

費用項目 自分で申請する場合 司法書士に依頼する場合
登録免許税 0円(免税適用時)〜評価額の0.4% 同左
戸籍・住民票等の実費 約3,000円〜 約3,000円〜
司法書士報酬 0円 標準的な事例の全国平均74,888円
森林法の届出 郵送代など数百円 別途

登録免許税は評価額の0.4%、ただし最低1,000円

相続を原因とする所有権移転登記の登録免許税は不動産の価額の0.4%です。加えて、計算した税額が1,000円に満たない場合は1,000円とする最低税額のルールがあります(登録免許税法第19条)。

評価額20万円の山林なら0.4%で800円ですが、そのままでは1,000円を納めます。評価額100万円ちょうどでも4,000円です。免税措置を使えばこの1,000円から4,000円がゼロになります。小さな金額に見えますが、次に説明するとおり「書き忘れると取り戻せない」性質のお金です。

書類の取得実費は3,000円前後

書類 手数料 備考
戸籍全部事項証明書(戸籍謄本) 1通450円 相続人の現在戸籍にも必要
除籍謄本・改製原戸籍謄本 1通750円 出生まで遡ると複数通になる
住民票の除票・戸籍の附票/相続人の住民票 各200〜400円程度 金額は自治体により異なる
固定資産評価証明書 300〜400円程度 名寄帳で代用できる自治体もある

被相続人が本籍を何度も移していると除籍謄本がふくらみ、実費が5,000円を超えることもあります。次の2つの仕組みで手間と費用を圧縮できます。

  • 戸籍の広域交付:令和6年3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍謄本・除籍謄本を請求でき、全国に散らばった分を1か所でまとめられます。対象は本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の戸籍に限られ、抄本は請求できません。
  • 法定相続情報証明制度:戸籍一式を法務局に提出すると、法定相続人の一覧図に認証文を付した写しを交付してもらえます。法務局によれば手数料は無料で、必要な通数を受け取れます。

【2026年4月変更】免税の根拠条文は「租税特別措置法第84条の2の2」です

評価額100万円以下の土地を相続で取得した場合、登録免許税は免税です。適用期限は令和9年(2027年)3月31日までです。

注意すべきは条文番号です。この規定は長く「租税特別措置法第84条の2の3」と案内されてきましたが、税制改正に伴う条文整理により2026年4月1日から「第84条の2の2」に変わりました。制度の中身は同じですが、申請書に書く文言は変わっています。旧番号のまま更新されていないページも残るため、書き写す前に法務局の案内を確認してください。

申請書の登録免許税欄に記載するのは次の一文です。

租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税

法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」には「記載がない場合は、免税措置は受けられません」と明記されています。書き忘れても、法務局が気を利かせて免税にしてくれることはありません。

もう一つの免税(第1項):祖父名義のまま止まっている山林

同じ条文の第1項には別の免税措置があります。相続で土地を取得した人がその登記をしないまま亡くなった場合、その人を登記名義人とするための登記が免税になるというものです。祖父の山林を父が相続したものの登記せずに父も亡くなった、というケースが典型で、父への相続登記分が免税になります。期限は同じく令和9年3月31日、記載文言は「第84条の2の2第1項により非課税」で、価額の上限はありません。登記簿の名義人が祖父や曾祖父なら、この第1項を確認してください。

評価額100万円以下の判定と、評価額がわからない山林

判定は土地ごと、持分なら按分した後の額

免税の対象は土地に限られ、建物は含まれません。山小屋や作業小屋があると、土地は免税でも建物には0.4%が課税されます。

また法務局の案内によれば、持分の取得に係る場合は不動産全体の価額に持分の割合を乗じた額が「不動産の価額」となります。全体で200万円の山林を2分の1の持分で相続するなら100万円と判定され、免税の範囲に入ります。共有で相続する山林では、この按分で免税に届くことがあります。

そもそも評価額が載っていない山林は珍しくありません

固定資産税には免税点があり、同一市町村内に同じ人が所有する土地の課税標準額の合計が30万円未満なら課税されません(地方税法第351条)。山林は評価が低く、免税点を下回って納税通知書も課税明細書も届かないことがあります。「親が山を持っていたと聞いたが書類が一枚もない」という状況は、多くがこれです。

この場合はまず市町村で名寄帳(市町村内に所有する不動産の一覧)を取得し、所在と地番を特定します。固定資産課税台帳に価格が登録されていない土地は、登記官が認定した価額が登録免許税の課税標準となります。認定基準は法務局ごとに定められているため、申請前に管轄の法務局へ相談するのが確実です。

なお、登録免許税の「不動産の価額」と相続税の評価額は別物です。国税庁の財産評価基本通達では山林を純山林・中間山林・市街地山林に分け、前二者は倍率方式、市街地山林は宅地比準方式または倍率方式で評価します。区分は評価倍率表の山林欄(「純」「中」「比準」)でわかります。税金の全体像は山林の税金の仕組みを整理した記事をご覧ください。

山林だけにある「90日以内」の届出義務

相続登記の3年とは別に、山林には森林法の届出義務があります。見落とすと、登記を期限内に済ませていても過料の対象になり得ます。

起算日は「相続開始の日」。遺産分割前でも届け出ます

森林法第10条の7の2により、地域森林計画の対象となっている森林の土地を新たに取得した人は、所有者となった日から90日以内に市町村長へ届け出なければなりません。林野庁によれば、個人・法人を問わず売買・相続・贈与などで取得した場合が対象で、面積の下限はありません。届出をしない、または虚偽の届出をしたときは10万円以下の過料が科されることがあります。

相続の場合の起算日は相続開始の日、つまり被相続人が亡くなった日です。「遺産分割が決まってから」ではありません。協議が終わっていない段階では法定相続人の共有として届け出ます。相続登記の3年より先に期限が来るため、実務上はこちらを先に片付けます。

必要なのは届出書と2点の添付書類だけ

  • 森林の土地の所有者届出書(市町村の様式。ホームページから入手可)
  • 土地の位置を示す図面(任意の図面に大まかな位置を記入したもので可)
  • 登記事項証明書の写し、または遺産分割協議書・権利証の写しなど権利取得がわかる書類

権利取得がわかる書類で足りるため、相続登記の完了を待つ必要はありません。郵送で完結し、費用は郵送代程度です。この届出のために専門家へ依頼する必要は通常ありません。

対象は都道府県が策定する地域森林計画に含まれる森林です。地目が山林でなくても森林の状態にあれば対象になり得るため、市町村の林務担当課に確認してください。相続直後の動き方は親の山林を相続したときの初動をまとめた記事も参考になります。

3年ルールと過料|間に合わないときの相続人申告登記

令和9年3月31日という締切

令和6年(2024年)4月1日から相続登記が義務化され、所有権の取得を知った日から3年以内、遺産分割が成立した場合はその成立日から3年以内の申請が必要です。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。この義務は施行前の相続にも及び、令和6年4月1日より前に相続したことを知っている未登記の不動産は令和9年(2027年)3月31日が期限です。免税措置の期限と同じ日である点は覚えておくと段取りが立てやすくなります。

過料はいきなり科されるわけではありません

法務省の「相続登記の申請義務化に関するQ&A」によれば、登記官が義務違反を把握するとまず催告書が送付され、それでも期限内に登記されない場合に登記官が裁判所へ通知し、裁判所が過料を科すかどうかを決めます。催告を受けた相続人から説明を受け、登記官が「正当な理由」があると認めた場合、裁判所への通知は行われません。

正当な理由の例として法務省が挙げるのは、相続人が極めて多数で戸籍収集や相続人の把握に時間を要する場合、遺言の有効性や遺産の範囲が争われ帰属主体が定まらない場合、相続人自身の重病等、配偶者暴力の被害、経済的困窮の5つです。山林の相続では最初の2つが実際に起こりますが、催告書が届いた段階で事情を説明する必要があります。

3年で間に合わないときの相続人申告登記

遺産分割がまとまらない、戸籍が集まらないといった場合の避難措置が、令和6年4月1日に始まった相続人申告登記です。登記名義人に相続が開始したことと自分がその相続人であることを申し出る手続きで、申出をすれば申請義務を履行したものとみなされます。相続人が複数いても1人で申し出ることができ、相続分の確定が不要なため戸籍も少なく済み、登録免許税もかかりません。

ただし万能ではありません。法務省は、遺産分割がされた後にこれに基づく登記をする義務を相続人申告登記によって履行することはできない、としています。分割成立後は改めて3年以内に相続登記が必要です。この申出だけでは売却や担保設定もできず、義務を履行したとみなされるのは申し出た本人だけです。時間を稼ぐための制度と考えてください。

相続自体を引き受けない選択肢もありますが、期限と副作用が大きいため山林の相続放棄の注意点をまとめた記事で判断材料を確認しておいてください。

自分で申請するか司法書士に頼むかの分岐点

日本司法書士会連合会が令和6年(2024年)3月に実施した報酬アンケートでは、土地1筆と建物1棟・法定相続人3名・戸籍収集や書類作成を含む標準的な事例の全国平均報酬は74,888円でした。報酬は各司法書士が自由に定めるため、地域や難易度で幅があります。判断の目安は次のとおりです。

自分で申請しやすいケース 依頼を検討したいケース
相続人が少数で遺産分割協議がまとまっている 数次相続が重なり相続人が多数になっている
対象が山林1〜数筆で、同じ法務局の管轄に収まる 山林が複数の市町村・法務局管轄にまたがる
被相続人の本籍地の移動が少なく戸籍が数通で済む 本籍地の移動が多く戸籍が10通を超える

山林だけなら申請書は1枚で足ります。法務局には様式と記載例があり、登記手続案内(予約制)で記載内容の確認も受けられます。まず案内を利用し、手に負えないと感じた時点で依頼へ切り替えるのが費用面では合理的です。

なお、自治体によっては相続登記に関する無料相談会や費用補助がありますが、全国一律の制度ではなく内容も大きく異なります。山林の所在地と居住地の市町村に確認してください。

登記の先にある出口:国庫帰属の費用は20万円では済みません

登記後に山林を手放したい場合、選択肢の一つが相続土地国庫帰属制度です。ただし森林の負担金は、よく紹介される「原則20万円」ではありません。

審査手数料と負担金

審査手数料は土地1筆につき14,000円で、取下げや却下・不承認でも返還されません。承認されると10年分の管理費相当額を負担金として納付します。原則20万円とされるのは市街化区域内の宅地など一部で、法務省が公表する算定式によれば森林は面積に応じた計算です(1,000円未満切捨て)。

面積区分 算定式 負担金の目安
750㎡以下 面積×59円+210,000円 500㎡で239,000円
750㎡超1,500㎡以下 面積×24円+237,000円 1,000㎡で261,000円
1,500㎡超3,000㎡以下 面積×17円+248,000円 2,000㎡で282,000円
3,000㎡超6,000㎡以下 面積×12円+263,000円 5,000㎡で323,000円
6,000㎡超12,000㎡以下 面積×8円+287,000円 10,000㎡(1ha)で367,000円
12,000㎡超 面積×6円+311,000円 20,000㎡(2ha)で431,000円

1haの山林なら、負担金367,000円に審査手数料14,000円を加えて381,000円です。面積が広がるほど単価は下がりますが総額は増えます。「20万円で引き取ってもらえる」前提で計画を立てると資金面で行き詰まります。

費用より高いハードルは境界です

却下要件・不承認要件があり、境界が明らかでない土地や所有権の存否・範囲に争いがある土地は申請できません。建物がある土地、担保権等が設定された土地、土壌汚染がある土地も対象外です。山林は境界標がなく隣地所有者も所在不明というケースが多く、ここで止まります。境界を確定させる測量費用は別途発生し、面積や地形によっては負担金を上回ります(山林の測量費用の相場、国庫帰属制度の審査状況)。

なお、40万円近くを払って引き取ってもらうより、少額でも売却できれば収支はプラスに転じます。隣接地の所有者や地元の森林組合など、当たる先はあります(山林売却の現実と対策)。

「山林の納税猶予」は一般の相続では使えません

山林には相続税の納税猶予制度もありますが、国税庁によれば、特定森林経営計画が定められた区域内の山林であることに加え、被相続人が作業路網を含めて100ヘクタール以上を所有し農林水産大臣の確認を受けていることなどが必要です。林業を事業として営む規模の所有者向けの制度で、一般的な相続では対象になりません。

適用の可否は相続人の構成や山林の所在・評価によって変わります。個別の判断は税理士・司法書士等の専門家にご相談ください。

まとめ

山林の相続登記は、手順を押さえれば自分で進められます。要点は次のとおりです。

  • 免税の記載文言は2026年4月1日から「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」です。旧番号(84条の2の3)を書き写さないでください。記載がなければ免税は適用されません。
  • 免税の適用期限は令和9年3月31日。相続登記義務化の経過措置の期限と同じ日です。
  • 森林法の届出は相続開始の日から90日以内。遺産分割前でも法定相続人の共有として市町村長へ届け出ます。怠ると10万円以下の過料の対象です。
  • 相続登記は3年以内。間に合わないなら登録免許税のかからない相続人申告登記で義務を履行できますが、分割成立後は改めて登記が必要です。
  • 国庫帰属の負担金は森林だと面積次第。1haで367,000円に審査手数料14,000円が加わります。20万円で済むという前提は誤りです。

まず取りかかるべきは、名寄帳と登記事項証明書で対象の山林を把握することです。所在と地番、評価額の有無がわかれば、免税が使えるか届出が必要かの判断はすぐにつきます。山林は後回しにされがちですが、90日という最短の期限が先に動いている点だけは忘れないでください。

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